百人一首は百人の和歌を一人につき一首ずつ選んで作られたもので、百人一首のルールや覚え方については幼少期に習った方が多いのではないでしょうか。恋の切ない気持ちを詠んだ歌が多い百人一首は、昔の人々が和歌や俳句を通して恋文として読んでいたとも言われています。同じように失恋した人にとっては一緒に気持ちに寄り添ってくれるような、共感できる歌も多いようで今回は失恋系の歌を7つ紹介していこうと思います。
情熱的で一途な想いを伝える失恋の歌:一首目
和泉式部の「あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびのあふこともがな」という歌です。意味は「私の命は長くありません。あの世への思い出にせめてもう一度だけ、あなたにお会いしたいものです。」という意味が込められています。病気によって自分の死期を悟った和泉式部が、叶わない恋心を乗せて詠った和歌です。切ない恋でありながら一途に思い続ける歌に、百人一首を知らない人でも感動してしまうのではないでしょうか。
恋愛によって憎しみの感情も生まれる失恋の歌:二首目
相模の「うらみわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ」という歌です。意味は「つれないあなたを恨み、悲しみの涙で濡れたせいで乾く暇もない着物の袖さえも口惜しいのに、その上この恋が原因で私の評判まで悪くなってしまうのは、本当に残念です。」というわかりやすい失恋の歌です。恋の切なさを歌った百人一首の中でも恋に狂い、悔しい思いをしたという感情がのった歌で、現代の恋愛を経験している人にも共感できる方は多いのではないでしょうか。
相手を思いながらも未練をこぼす失恋の歌:三首目
右近の「忘らるる身をば思はずちかひてし人の命の惜しくもあるかな」という歌で、意味は「あなたに忘れ去られていく私のことはなんとも思いません。でも、いつまでも愛することを神に誓ったのだから、誓いを破ったことで天罰が下り、いずれは命を落とすことになるあなたのことを考えたら、とても残念に感じてしまいます。」という意味です。振られた相手に未練や執着して、そして心配するという複雑な感情を示す和歌となっています。切ない恋心が百人一首の和歌として選ばれているのには共感できるという理由があるのかもしれません。
昔からの共通認識を歌う失恋の歌:四首目
柿本人麿の「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」という歌は「山鳥の尾が長く長く垂れさがっているような長い夜の中、私は独り寝ているものです。」という意味が込められています。会いたい人に会えない夜や失恋して好きな人に会えなくなってしまった夜は、とても長く感じるといった切ない表現を表している百人一首の和歌の一つです。恋をして悲しみを経験した際にはこのような心情になる方が多いのではないでしょうか。
わかっていても嫉妬を言いたくなる失恋の歌:五首目
右大将道綱母の「嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る」という歌で「悲しみを嘆きながら孤独に寝ている夜が、明けるまでにどれだけ長いのかを、あなたは知っているでしょうか。いえ、知らないでしょう。」という意味が込められています。昔は一夫多妻制で、夫が来てくれるのを待つことが一般的でした。夫が別の妻の元へ行ったとわかって、嫉妬や皮肉を込めた歌を歌ったと言われています。待つことしかできない切ない恋を歌った百人一首の歌に片思いをしている人には共感を覚えた人も多かったようです。
男性の目線を描いた失恋の歌:六首目
謙徳公の「あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな」という歌で「私をかわいそうだと言ってくれる人は、誰も思いつかないままで、きっと私はむなしく死んでいくに違いないのだな」という意味が込められています。好きな人には振り向いてもらえず、その悲しみを理解してくれる人がいないという切ない失恋の絶望感を表した百人一首の男性の失恋を歌った和歌です。大きな失恋をすれば誰でも悲しみに暮れてしまうということを意味しているのではないでしょうか。
むなしい思いを表現した失恋の歌:七首目
壬生忠岑の「有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし」という歌で「有明の月はとてもそっけなく見えた。恋人にも冷たくあしらわれて、その時から、私にとって明け方ほど憂鬱な時間はないのです。」という意味が込められています。有明の月は夜明け前まで残っている月のことで、恋人の女性に冷たくあしらわれた男性には自分を照らす非情なモノに感じたのかもしれません。切ない恋を夜が明けるたびに思い出してしまうのは悔しいという心情を表した歌で、百人一首を通して過去の恋愛を思い返してしまう人もいるかもしれません。
まとめ
今回は百人一首の中から失恋の意味が込められた歌について紹介していきました。恋の歌として有名な歌は多く存在しますが、失恋の気持ちを歌った和歌や俳句もあるので気になった方は是非一度調べてみてください。昔の人々も現在のように恋の切ない思いを馳せていたり、悲しみや憎しみを持った歌を歌ったりしているのは、共感できる部分になっているのではないでしょうか。心に染みる歌を探してみるのも立ち直るきっかけになるかもしれません。